Tool as an Embodied Interface

ビデオゲームで遊ぶ時は,一般的にジョイスティック やキーボードなどのコントローラーを直接自身の手で操 作し,映像内に登場するキャラクタの操縦を行うであろ う.このときコントローラーはキャラクタを操縦するた めに身体行為を伝える「道具」であり,またキャラクタ もゲームの世界に参加するための表現としての「道具」 であるといえよう.こうした道具と身体の関係において, 大きく 2 つの関係を考えることができる. 1 つめは,例えばハンマーを持つことで素手では打ち 付けることができない釘を打ち付けることや,ピンセッ トを使用することで素手ではつまむことが困難な小さな ものを扱うことなどの,自身の身体の動きを増幅したり, 適応化させたりする身体行為の機能の支援である.ビデ オゲームにおいて,コントローラーを直接操作すること で自身の行為を計算機に伝えるはたらきはこれに相当す るだろう. 2 つめは,例えば外科医がメスを利用している時には メスが自身の手の一部分になっていることや,盲人が杖 を利用して歩いている時には,杖の先にまで身体が拡張 していると言われているように,道具へ自身の身体が 拡張したり,道具と身体とが一体になるような身体内部 における道具との関係である.意識しないでもコントロ ーラーを身体の一部であるかのように自由に操作するこ とが可能であったり,ゲーム内で操作しているキャラク タの動きに合わせて,思いがけずに自身の身体も動いて しまったりする経験がこれに関係するだろう. 前者の,身体行為の支援という視点からはこれまで数 多くの道具が考案され,道具のデザインや利用しやすさ という点から,例えばエルゴノミクスデザインという手 法や,ユーザビリティといった評価方法なども検討され てきた.一方,後者の身体内部における道具との関係性 については,それと比較して発展途上の領域である. 本稿では後者の関係に着目し,脳科学や認知科学の分 野におけるいくつかの研究事例を紹介するとともに,身 体が道具へと拡張したり,道具と一体化したりするイン タフェースという立場から,身体的インタフェースとし ての「道具」という著者らの研究指針について紹介する. 2.身体と道具の関係